国際新秩序と現代日本の使命

10月16日に放映された西部邁ゼミナール(http://ow.ly/2VrCr)「『核』が日本を沈没から救う」の中で、出演者の伊藤貫氏は日本の外交を「5歳児(反米)と10歳児(親米)のダダの捏ね合い」と評した。成人にもなれない日本人の「平和」論のレベルの低さは国際的なひんしゅくモノだそうで、この部分に関しては中国の足元にも及ばないというのが悲しい現実となっている。
伊藤氏は核武装による戦争抑止戦略を主張している。確かに核抑止効果は国際政治において有力な手段である。一方でアメリカの国策は現在に至るまで、「露中朝鮮が保有したとしても日本(とドイツ)にだけはどうしても核を保有させたくない」とのことだ。中国の脅威に晒されている日本が自主防衛の目的で核を持つことに対し、陰に陽に妨害活動を展開しているらしい。ある意味それだけ日本人が世界の脅威になり得る能力を有している左証かもしれない。戦後の日本が米国の庇護による「平和」の影で、自国を守るという思いのかけらもない幼稚な国民になり下がってしまったという見方も間違ってはいないだろう。ここで米国との関係を見直し、自主防衛への本格的な転換を図ることに一定の意義があることを全く否定するものではない。ただ今後の国際政治における日本国の戦略を考えるとき、このような状況を肯定的に捉えることもまた必要ではないかと考えるのである。
なぜなら戦後日本の「平和」路線に対する国際世論の支持は確実に存在しており、またそれと合わせて経済的実績に裏打ちされた戦略基盤の構築も可能だからだ。「成人男子」の喧騒が絶えない国際政治の世界で、より上位の視点から仲介役を買って出ることのできる経済的抑止力が日本にはある。ここではそのキーワードを「母性愛」と名付けたい。ただしこのような戦略は旧来の国際政治舞台ではその機能が保証される状況にないことから、新たな国際的ネットワーク形成が必要となる。ここで新たな提案として浮上しているのが国連の「上院」として構築されるべき宗教者による新たな平和的組織基盤だ。そのような機関を設置して宗教間の歴史的和解を推進するための共通価値観を定立することが今後の日本の使命となる。その役割を果たすためには当然ながら高度な知的活動が要求されることになるが。
このベースとなるのはマザーテレサが国連世界女性会議(北京会議)のメッセージ(http://bit.ly/9pELnJ)で指摘した「母性愛」であると考える。これは決して「女性解放論」ではない。翻って現代日本には新左翼によって扇動された「ジェンダーフリー」論が蔓延している。この思想を克服し、日本固有の伝統的価値観を昇華発展させることのできる知的活動基盤の確立が急務となっている。中共が国内の民主的活動を抑えて日本の攻略を完成するのが先か、日本が国体を覚醒させアジアに潜む脅威を克服する役割を果たすのが先か、今まさに双方がその生存を賭けた闘いを展開させようとしている。