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原発技術と「夢」の国・日本

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エネルギーと原発のウソをすべて話そう

エネルギーと原発のウソをすべて話そう

  • 作者: 武田邦彦
  • 出版社/メーカー: 産経新聞出版
  • 発売日: 2011/06/01
  • メディア: 単行本

東日本大震災後、日本の統治機構の問題点が次々と暴露されてきた。

 

その中でも原発問題は最も深刻な課題だと思われる。
これまでの環境問題関連の著作やマスコミ等で有名な著者に対する評価はまちまちだが、本書にある日本人の問題点という内容については納得する内容が多く、書評として残しておきたいと考えた。

本書の冒頭部分で開口一番、かなり耳の痛い意見が飛び出す。
福島第一原発の事故でわかったことは、日本の技術力は非常に高くても、それを使う人間があまりにも低いレベルだということでした。・・・簡単にいえば、国の安全基準では原発が地震で事故を起こすのは必然でした。原発は地震で壊れるようにできているのです。こんな大事故を起こしておきながら、原子力に携わっている人たちは反省もせずに、本当のことを言いません。国も同じです

また「自衛隊問題」「拉致問題」など、他人の意見を気にしてはっきりモノを言わない日本人の民族性が問題を助長させているという指摘も出てくる。
これらの問題は、「曖昧な日本人」と言われるような日本人の性質によるものだと考えます。・・・一方では日本人の美徳であり、一般的な状況では十分に価値のあることだと思いますが、こと防衛やエネルギー、食糧というような日本人の命にかかわることについては「曖昧」ではすみません
平時には自衛隊を毛嫌いして、軍に格上げせず侮辱するのに、台風や地震がくると自衛隊を尊敬するという軽薄さを持っている。さらに、尖閣問題などで中国が強く出たら日米安保はどうしたと言い、ときにアメリカ軍を批判し、米軍基地は国外に移設しろと運動をする。これらは、決して無知がもたらしているものではないことは、いわゆる日本のインテリ層がこのような矛盾を抱えていることからもわかります。適当にその場を切り抜ければいいという思考態度が、日本社会では受け入れられているのでしょう

さらに問題を混乱させているマスコミについての意見もわかりやすい。
さらにすごい豹変ぶりを見せたのは朝日新聞でした。これまで、原発の放射性物質漏洩事故というと、福島原発の1億分の1でも大々的な批判キャンペーンを張っていたのですが、福島原発事故が起こると、「放射線でがんになる人は1000人のうち5人にすぎず、日本人の3分の1が80歳になればガンで死ぬのだから、騒ぐことはない」という趣旨の署名入り記事を大きく載せました

そして巻末近くでは今後の原発政策に対する指針が述べられているが、これが非常に大切な提言だと思われる。
福島原発の事故を起こした日本社会の根源的な問題を挙げ、再び原発を動かすのならば次の4つの力が資格要件だということを述べました。
1 覚悟を決めて真正面から向き合う力 2 技術と思想を分けて考える力 3 科学的事実を認める力 4 学問と表現の自由を貫く力
この4つをもてなければ、日本は原子力を進めることができないということです。原子力のみならず、巨大技術をマネジメントできません

技術は思想ではありません。しかし、思想なき巨大技術は崩壊します。技術はあくまでも人類の福利に貢献するものであり、それは学問や表現の自由を厳密にもってこそ完成すると私は考えます

「あとがき」で教授が指摘しているように、我々は今もまだ日本という国の「夢」の中にいるようだ。

 

日本人にとっての食養生

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50歳からの免疫力と快楽

50歳からの免疫力と快楽

  • 作者: 帯津 良一
  • 出版社/メーカー: ブックマン社
  • 発売日: 2010/04/24
  • メディア: 単行本

 

最近持病のことが気になりだし、誰かの知恵を拝借したくなることが多くなった。
病気の解決は結局「自然治癒力」であり、その基本が免疫力なので、図書館でその手のタイトルで読みやすそうなものを漁ってきた。
著者はホリスティック医療の老舗である病院の医師たちの手によるシリーズで、他にも何冊か似たようなタイトルがある。
この手の著作は嫌いではないのだが、ややもすると自社商品の紹介本のようなものが多く、誰もが無理なく実践可能な内容がなかなか見つからないことも多い中、著者の主張は納得がいくものが多い。

第二次大戦で日本が被った最大の致命傷は、多数の戦死者もさることながら、当時の米国の勝手な小麦戦略に対して盲目的に従属しただけの「食の欧米化」、そしてそれに続く戦後の栄養教育だろう。
「ギブ・ミー・チョコレート」の圧力により、日本の伝統的な食文化はほとんど片隅に追いやられ、「歴史あるヨーロッパの食文化には優れた健康食や伝統食がたくさんあります。しかし・・・それをそのまま、全く風土の違う別の国が模倣しようという考えが奇妙なのです」という当たり前のことさえ見えなくなってしまった結果、日本人の免疫力は減少の一途をたどったというのが実際だろう。
健康な食事の第一歩は主食の選択」という主張は当たり前のことなのに改めて納得させられてしまう。
自分もオジサン族のご多分にもれず日本食愛好家だが、それが一番まともだということに安堵感を覚える。
ただもちろん、咀嚼等の正しい摂食方法に従った上での話だと思うし、著者もはっきり、「免疫力を上げていくには、食材ではなく、食生活、そして生活全般を見直さなければならない」と説明している。

また最近は食文化の変容に加えて社会的要因も見逃せない問題であり、特にバブル崩壊による経済悪化を背景として、人間の最大の快楽である「性」が閉ざされ、そのはけ口として「食」が快楽の首位を奪っていると主張している。
なるほど、だから老若男女問わず「スイーツ」となってしまう原因がよくわかる。
確かに近隣諸国に行けば分かるが、日本ほど菓子文化が発達した国はない。
結局現代日本人にとって、「食」以外の要素は人生のたしなみとして成立しにくいということなのかもしれない。

ただし問題はただ食べればいいということではなく、「人間がほかの動物と決定的に違うこと。それは「食」が、ただ生命を維持するためだけの行為ではない、ということなのです。「食」と「心」はセットです」 というのがポイントだ。
他の存在と「食」を分かち合う、それが人間のエッセンスであり、そこに人生の真の価値も隠されているはずだ、という思いに駆られた。