「英語」よりも考えるべき「自分の正体」

英語が社内公用語になっても怖くない グローバルイングリッシュ宣言! (講談社プラスアルファ新書)

英語が社内公用語になっても怖くない グローバルイングリッシュ宣言! (講談社プラスアルファ新書)

  • 作者: 船川 淳志
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/02/22
  • メディア: 新書

昨今話題の「英語公用語化」を取り上げて現代日本の問題を鋭く指摘した意欲作。
著者のテーマは「英語学習の要点」といった話ではなく、「日本人の転換」だ。
低迷にあえぐ日本の現状を考えるとき、我々が気づいていない問題点がそこここに散りばめられている。
改めて自分の行動姿勢を見直すと該当する内容が多く、以下のような痛い指摘もあった。

『欧米人が中国人や日本人と働く難しさについて、よく次のようなことを述べる。
「日本人と働くのも、中国人と働くのも、たやすいことではない。ただ中国人と働いていると何が難しいのかが理解できるが、日本人との課題は、そもそも何が難しいのか、その理解すらできないことだ」』(p.73)

ちなみに自分の留学先はロシアで、イギリスを除く英語圏での経験がほとんどないこともあり、多少の英語コンプレックスがあることは否めない。
一方で「日本人は英語できるよ」と常に楽観視している部分も強い。
それはロシア滞在時代に所属した団体の上司がアメリカ人とイギリス人だったが、たどたどしい英語でもとりあえずは通じていたという感覚があるからだ。
当初ロシア語が話せない欧米人を前にして、「ロシアくんだりまで出かけて行って何で英語で会話しないといけないの?」と腹が立ったが、慣れれば慣れるものである。

そこで実感したのは、中高で学んだ英語の知識が決して無駄にはなっていないということだった。
実は旧ソ連時代は語学教育が高度に専門化されていたため、第一外国語が英語でなくフランス語やドイツ語だけしか学んでいないという学生も結構いた。
彼らに比べれば日本人学生の英語知識は相当なものだと理解していた。
このような基礎が基本的な義務教育を受けた日本人全員にあることを忘れてはならない。
我々の問題はそれを活用する機会に恵まれていないし、活用しようとする意識も薄いということ。
だからそういう環境が提供されれば、それなりに会話能力は向上するはずなのだ。
無論ビジネスレベルを目指そうとすればそれ以後も努力を重ねないといけないことは明らかだが、あとはやる気の問題だ。
著者曰く、我々日本人もまた「グローバルイングリッシュのネイティブスピーカー」なのだ。

新書の最後の方にある著者の言葉が印象的だった。

もうそろそろ、我々も「これだけ飲めばOK」という“魔法の丸薬”や“サプリ”を探し求めることはやめたらどうだろうか。その代わりに、体を動かし、いろいろなことを吸収し、学んでいく。健康の維持と英語力は似ていると考える。
変わらなければならないのは我々自身なんだ―と気づくことが、英語にとどまらず、この国を元気にすることにつながるのではないだろうか
』(p.200)